気持ちの整理の仕方はありますか(その2)。

Q. 試験が近づいてきて、「落ちたらどうしよう」という漠然とした不安が頭をよぎり、やってはいるものの、何となく勉強に集中して取り組めていない感じがします。何か良い気持ちの整理の仕方はあるのでしょうか。

 

〈今回のポイント〉
・気持ちを整理するためのコツは何か。

 

《「イメージ」よりも、「数字」を考えよう》

前回のブログ記事では、「コントロールできないもの」に捉われないようにすることが大切だということをお話ししました。

気持ちの整理の仕方はありますか。

では、もう一歩踏み込んで、より気持ちを整理して、勉強に集中できるようにするためにはどうすればよいかということについて触れてみたいと思います。

本試験が近づいてくると、模擬試験の結果が振るわなかったことで、今までの勉強が間違っていたのではないか、今後どうすればよいのかと、落ち込んでいる人がいます。

また、本試験までの残りの日数が気になって(時々、カウントダウンをしている人も見かけます)、「試験本番までにちゃんと勉強を終えることができるのか」と不安になる人もいます。

しかし、よくよく話を聞いてみると、「不安になっているようだけど、結構、順調じゃないですか?」というケースも多々あります。

なぜ、そのようなギャップが生まれるのか。それは「イメージ」で捉えるか、「数字」で捉えるかの差だと私は感じています。

少し話は脱線しますが、次のようなシチュエーションを考えてみてください(大学1、2年生向けの講義のときに触れるネタのひとつです)。

朝、通勤・通学などで10分ごとに来る電車を利用しているとします。いつも時刻表は気にせず、準備のできたタイミングで家を出ているとしましょう。

ある日、ホームに着いたら、2分前に電車が出発していました。翌日もホームに着いたら3分前にすでに出発、さらにその翌日も電車は2分前に出発・・・3日連続でこんなことが続くと、どんなことを思うでしょうか。

何となく「何だか、最近ついてないな」と感じるでしょうか。これは「イメージ」です。

10分感覚で来る電車にすぐ乗れる(3分ちょっと以内)のを「ラッキー」、3~7分程度で乗れるのを「普通」、7~10分程度で乗るのを「アンラッキー」として捉えると、それぞれの確率は1/3ずつになります(およそですが)。

そうすると、3日連続でアンラッキーの確率は、(1/3)×(1/3)×(1/3)=1/27になります。「ついていない」という印象を持つかもしれませんが、確率は1/27ですので、1か月に1回このようなことが起こるのは決して不思議ではありません。これが「数字」です。

「数字」で捉えてみると、これは決してついていないことではなく、1か月に1回は十分に起こり得るごく当たり前のことと捉えることができます。

「最近ついてない」と感じるより、「当たり前のこと」と捉えた方が、ちょっとしたことではありますが、気持ちの負担は小さいです。

行動経済学者ダニエル・カールマンの『ファスト&スロー』などに詳しくは書かれていますが、脳はまず「直感」や「イメージ」で物事を判断する習性があります。即座の判断にはそれが有用だからです。

もちろん、「直感」や「イメージ」は大切なことではありますが、次にじっくりと「数字」などの事実に目を向けることも大切です。

皆さんも「あれ、体調が悪いかも」というイメージを持ったら、体温を測ることで数字に目を向けますよね。何かの病気が疑われたら、まずは血液検査を行い、その数字に注目をします。

試験勉強についても、「イメージ」ではなく、一歩踏み込んで、「数字」を意識するようになると、より気持ちを整理して、勉強に集中できるようになるかもしれません。

以下、模擬試験などでの「点数」と、今後の勉強「時間」という数字について、触れてみたいと思います。

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《「点数」と「時間」の捉え方》

この時期になってくると、「模試が思ったより取れなくて…」と、ショックを受けている方からの相談を1日に何件も受けるということもありました。

以下のブログ記事でも書きましたが、「模試の成績≠本試験の成績」にはなりません。模試の成績で実力チェックをするよりも、見たことが無い本試験の問題を通しで解いて見るほうが、より精度の高い「数字」を得ることができます。

ちょっと言い過ぎかもしれませんが、「点数」として捉えるべき数字は、本試験の問題での点数であって、模試の点数ではありません。分析に必要なのは、より精度の高いデータです。

模試の結果が悪くて、ショックです。

また、基本の勉強を終えた方にとっては、直前期は自分の知識に穴が無いか、チェックをする時期でしょう。日々、これもできれば見たこと無い問題で、小テストを行い、その点数から習熟度を見極めるとよいと思います。

自分の実力をチェックしたいです。

また、だんだんと「試験まで時間が無い!」と焦る人が増えてきますが、これもしっかりと時間をイメージではなく、「数字」で捉えてみてください。

1日に10時間勉強できるとして、あと2か月あれば、勉強をしない日をいくらか作って50日、10×50=500時間あることになります。

予備校では憲法の授業をだいたい3時間×8~9コマかけて行います。多く見積もっても30時間です。まだ500時間使えるなら、今からもう一度、憲法をやり直すことも決して難しくありません。

1日問題を100問解くというのは、無謀でしょうか。試験では午前中に教養50問、午後に専門50問を解くことがあります。復習の時間込みで考えても、まったく無謀ではありません。

1日100問解けるなら、3日もあれば300問の問題集をすべて解き終えることができます。2週間あれば、4、5冊はいけるでしょう。

こうやって時間を計算してみると、アウトプットの勉強を行うのには、意外と時間がかからないことがわかります。

また、スケジュールの話で言えば、国家一般・地方上級がメインの方は、5月中旬から6月中旬でメインどころの試験が実施されません。この1か月間で250時間は確保できます。

使える時間をイメージではなく、「数字」として認識すれば、気持ちも整理をして、少しはやるべき勉強に集中できるようのではないでしょうか。

 

2回にわたって、気持ちの整理の話について書いてきました。

この時期に入ると、せっかく勉強そのものは順調に来ているにもかかわらず、精神的に参ってしまい、試験勉強を止めてしまう人もいます。

勉強を止めないまでも、集中力を欠いて、それがまたストレスになるという、悪循環に陥ってしまっている人もいます。

メンタルというのはやっかいなもので、なかなか100点の状態を維持することはできません。私自身、ざわざわする気持ちをなだめながら、65~80点くらいをキープできるように心がけるというのが実際のところです。

100点満点の状態にはできないかもしれませんが、気持ちを整理することで、悪いスパイラルに入ってしまったところから、少し抜け出すことはできるのではないかと思います。

これから試験まで大切な時期です。気持ちの整理がつかず、気持ちがざわついてしまっている人は、ほんの少しだけ気持ちを切り替えて、より良い結果を出せるようにしていきましょう。

 

〈まとめ〉
・「イメージ」よりも「数字」で考えることで、気持ちの整理はつけやすくなります。
・「過去問」を解いたときの点数のように、より精度の高い数字で分析をしましょう。
・時間についても、イメージで捉えるのではなく、実際に計算をして考えてみましょう。