模試の結果が悪くて、ショックです。

Q.今まで自分なりに勉強をしてきたつもりですが、思っていたよりも点数が取れておらずショックです。試験も近づいてきているのに、勉強方法が間違っているのではないかと心配になり、勉強に集中できません。

 

〈今回のテーマ〉
・模試はどのように使うべきか?
・模試の点数は、実力を反映しているか?
・自分の実力を正確に把握する方法は?

 

《わかった「つもり」の確認に》

 

 私も昔、公務員試験を受けました。直前期に行われた予備校の数的処理のテストで、16点中6点という点数を取り、一瞬、勉強が手につかなくなった記憶があります。数的処理が得点源だったので、とにかく焦りました。

 

 ただ、悩んでいる暇もないわけでして、これを機会に自分の弱点を見極めることに時間を割きました。私の場合は、数的処理が得意であることは間違いなかったのですが、とにかくムラがあり、ミスが多かった。

 

 ミスの原因のひとつは計算ミス。明らかに暗算が弊害でしたので、筆算に切り替えました。

 

 ムラがある理由は何か。パターン化せず、ゼロから考えていたので、1問にはまってしまうと、時間もかかり、時間が無いことからくる焦りで、ミスをする。結果として、調子が良いときと悪いときの差が大きかったのです。

 

 ムラを無くすために何をしたかというと、使っていた問題集を1問目から見直していき、各テーマの「解法パターン」を整理していきました。これにより、時間の短縮につながり、本試験では点数が安定しました。

 

 自分語りみたいになってすみません。話が脱線しましたが、皆さんにもこれを機会に自身の「課題」を整理してもらいたいと思います。

 

 思っていた通りに点数が取れなかったジャンル(科目よりもっと細かく)は何なのか。応用問題だから解けなかった(これはもう気にしない)のか、基本の理解が足りなかった(これはきちんとケア)のかなど、直前期に向けた自己診断の材料に模試を使うとよいと思います。

 

 そして、もう1点。わかった「つもり」になっていないか確認をしてみてください。繰り返し同じ問題を解いていると、理解ができているのか、それとも問題と解説を覚えただけなのか、その見極めが難しいです。わかった「つもり」になってしまっている論点を、見たことがない問題で、本当に「わかった!」と言えるかどうか、確認をしてみてください。

 

 と、ここまで書きましたが、それ以上にたしかめてほしいのは…。実はその点数、そこまで悪くないなんてことはありませんか?

 

 

《模試のほうが本試験より難しい》

 

 今の時期、模試のシーズンに入ると、同じよう悩みを抱えた受験生の方から相談を受けるのですが、こちらの目から見ると、「そんなに嘆くほど悪くないのに」というケースが半分以上を占めます。

 

 たとえば、本試験で6割欲しいところが5割だったであったならば、それは「順調」という印象です。いくつかの予備校の模試を目にする機会がありますが、まず本試験より簡単な模試というのは見かけません。

 

 私自身、自然科学の模試の制作に関わっています。あくまで、私見ではありますが、模試の方が難しくなる理由を述べてみたいと思います。

 

 以下の問題を解いてみてください。

 

 

 まずは解答を。正解は2です。Na(ナトリウム)の炎の色は黄色です。以上。

 

 これで解説は終わりですが、もう一言。私の場合、授業では、典型金属元素の炎色反応の色は、「果物の色」とリンクして覚えると教えています。

 

 Liといえば…リンゴ!だから、赤! Caといえば…柿!だから、橙! そして、Naといえば、梨!だから、黄! という感じです。他は無茶なものもありますが…どうでしょう? 頭に入りやすいと思いませんか?

 

 問題そのものの話はこれくらいにして、模試の難易度の話に戻ります。私がこの問題を模試で出すかというと、出しません。このレベルの問題も出題されていることを知っていますが、模試には出せない。

 

 なぜかというと、復習の役に立ちにくい問題だからです。せっかく同じようなテーマで出題するならば、アルカリ金属の性質や、これらの元素に関係する化合物の性質・製法などと合わせて出題します。復習をして、試験で点が取れてほしいからです。

 

 決してあえて難しく内容を問うことはしません。基本的な事項をたくさんチェックしてもらえるような問題のほうが、よりよい復習につながると思って出題するのですが…結果としては難しくなってしまうのです。

 

 模試の場合、終わった直後は平均点や正答率などもわからないため、どうしても、自分の点数そのもので出来を判断せざるを得ません。結果がわかるまで、数週間でしょうか。直前期に、もやもやした気持ちを持ち続けるのは、様々な点でマイナスです。上のことを意識した上で、点数そのものはあまり気にしないでほしいところです。

 

 

《本試験問題で実力チェックを!》

 模試で自分の実力をチェックしようと思っていた方は、上の話を聞いて、「では、どうすればよいの?」と思っているかもしれません。実力チェックについては、模試以外にぜひ活用してもらいたいものがあります。それは本試験問題です。

 

 今の時期になぜ行うかというと、「勉強はやってきたけど、果たして本当に実力がついているかどうかわからない」と不安に思っている人が多いからです。実力がついているかどうかを試すためには、「今の実力で昨年の本試験問題を、実際の試験と同じ設定(制限時間)で解いてみる」という方法、これが一番わかりやすいです。

 

 イメージや直感という曖昧なものよりも、「数字」のほうが判断材料としては適切です。本当は過去3年分くらいやってみると、より精度は高くなりますが、まずはぜひ1年分やってみることをオススメしたいです。

 

 TACなどの予備校から解説付きの過去問が販売されています。また、正答番号のみで解説抜きであれば、たとえば、特別区の本試験問題は、以下で公開されています。

 

 

 特別区の合格点は教養論文の出来によって、大幅に上下しますが、教養+専門で48点(6割)を目安にするとよいでしょう(事務区分)。実際は教養論文の出来によっては、40点台前半から合格可能です。

 

 なお、文章理解の問題文は市販本は著作者の許可が得られているものは掲載、上のリンク先で公開されているものは未掲載です。文章理解の点数は、日頃の出来具合で想定するとよいでしょう。

 

 本試験と同じ時間設定で問題を解いた結果、たとえば、教養24点+専門27点=51点だったとしましょう。とてもいい調子です。まだ手を付け切れていない科目を勉強しつつ、択一以外の論文などにもしっかり時間を割いていくという方針が立ちます

 

 教養18点+専門23点=41点だったとしましょう。今の実力では合格までもう一歩足りないので、点数の取れそうな科目、ジャンルで最後のもうひと押しをするという方針が立ちます

 

 模試と違って、昨年の本試験であれば、「今の実力で昨年の本試験を受験したら、合格するか?」が、答え合わせをした瞬間にわかります。ちょっと怖いかもしれません。

 

 しかし、漠然とした不安を抱えるより、今の実力を「点数」という形で把握して、今後どのような形で点数を伸ばすか方針を立てるほうが、試験の合格につながります。

 

 模試で成績が振るわなかった方は、ぜひ「本試験」で本当の実力をチェックしてみてください。模試で感じてしまった悪いイメージよりも、本試験での点数が良いかもしれません。今まで頑張ってきた勉強はきっと身についていると思います。

 

〈まとめ〉
・模試は「わかったつもり」の理解度チェックに使いましょう。
・模試は本試験よりも難しいもの。結果は気にしすぎないようにしましょう。
・実力チェックは「本試験問題」をまったく同じ設定で解いてみましょう。