一般知識はどの程度やればよいですか。

Q. 人文科学や自然科学などの一般知識の勉強について悩んでいます。例えば、頻出テーマだけを勉強したり、高校では習っていない物理や地学は切って、科目を絞って勉強しても良いのでしょうか。

〈本日のテーマ〉
・一般知識の勉強は、どの程度、絞ってよいのか。
・絞る場合のコツは何か。

 

《受験先の「出題数」を確認する》

一般知識をどの程度、学習する必要があるかについては、まず、受験する試験の出題数が関係してきます。まずは自身の第一志望を中心に併願先も合わせて、出題数を確認してみましょう。

市販の過去問集(TACの『本試験過去問集』)や『受験ジャーナル』などの情報誌に掲載されています。

一例を挙げるとすると、平成24年度の試験制度変更以降、国家一般職試験では地学が出題されていません(近年は国家専門職でも)。

そうなると、国家一般職・国家専門職が第一志望の人は、地学という科目ごと切ってしまうという手も十分にありでしょう。

特にこれらの試験は教養択一以外に、専門択一試験もありますので、そちらでカバーするという手もあります。仮に出題されても地学は1題ですので、ダメージは少ないです。

しかし、同じ専門択一試験がある特別区(東京23区)の試験では、選択解答制ではあるものの、物理、化学、生物、地学がいずれも2題出題です。

例えば、ここで物理と地学を切ったとき、この4題が簡単な問題だった場合、ロスが大きくなる可能性もあります。

また、択一試験が教養試験のみの場合には、専門択一試験でカバーするという手が使えません。そうなると、教養試験の1点の重みが増してきます。できれば、幅広く学習に取り組みたいところです。

近年の東京都Ⅰ類B(一般方式)で択一試験のボーダーラインが7割を超えた年がありました。数的処理や文章理解では差が付きにくく、一般知識の出来が合否を分けたのが印象的でした。

一般知識の各科目について、「1問しか出ないからやらない」という考え方は、択一試験が教養試験のみの場合にはリスクがあることを覚えておきましょう。

 

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《「科目」ではなく、「ジャンル」で取捨選択を》

受験先の「出題数」を確認したら、次に「得点プラン」を組み立ててみましょう。例えば、教養試験で6割ほしいとき、どこで何点取るかを想定します。

出題数の多い数的処理が得意な人であれば、一般知識の勉強はかなり減らすことができます。しかし、数的処理も英語も苦手という人であれば、広い範囲で一般知識の勉強をする必要が出てきます。

必要な点数から想定すれば、その点数を取るためにどこまで絞ることができるかは自ずから決まってきます。

プランニングについては、過去に何度かブログで触れていますので、まずはこちらを参考にしてみてください。

英語が苦手です。公務員試験で英語の足切りはありますか?

科目が多くて、どこから手を付ければよいかわかりません。

タイプによって異なりますが、肌感覚ですと、受験生の半数以上のプランは、「一般知識は完璧を目指さない。けれど、そこそこは拾えるようになりたい」という感じでしょうか。

では、「そこそこは拾えるようになりたい」という方に意識してほしいことは何か。次の3点になります。

(1)「科目」ではなく、「ジャンル」で絞る。

例えば、特別区では物理が2題出題されますが、「物理を切る」と決めてしまうと、この2題の分を選択の幅を狭めることになります。

物理といっても、力学もあれば、電気もありますし、暗記物の知識問題(学者や定理の穴埋めなど)もあります。実際、過去には中学レベルの基本の電気回路の問題(オームの法則)も出題されています。

無理をする必要はまったくありませんが、「力学」というジャンルを切って、「電気」だけ手を付ければ、1題拾うことができるかもしれません。

(2)「絞って深く学ぶ」より、「なるべく絞らず浅く広く学ぶ」

この後の話にもつながりますが、1科目でたった1問しか出題されないとなると、数ジャンルのみに絞って勉強をしても、そこから出題される可能性は低くなります。

例えば、「力学」について、せっかく様々なパターンの応用問題まで含めて学習をしても、そこから出題されないということが当たり前のようにあります。

もちろん時間に余裕がある人は深くまで学ぶことを否定しませんが、「そこそこは拾えるようになりたい」のであれば、基本的な内容を中心に広く学ぶ方が点数に繋がります。

そもそも難問が出題されれば、正答率が低いため、他の受験生に差をつけられることはありません。また、自然科学などは基本問題であっても、正答率は低めです。つまり、基本問題が解けるだけでも、他の人に差をつけることができます。

(3)直前期の丸暗記は得点力向上の「即効薬」

試験まで残り2週間となったとき、試験での得点を伸ばすために必要なのは、重要科目の基礎の確認(意外と漏れがあります)と知識系科目の丸暗記だと思っています。

そのタイミングで数的処理を勉強してもなかなか伸ばすことはできませんが、塩素が17族(ハロゲン)で黄緑色をした有毒なガスであることを覚えれば、それだけで1点拾えます。

とにかく覚えれば点数がもらえるというのは、非常に即効性が高い得点力アップの方法です。記述式の試験ではないので、うろ覚えでも対応が可能です。

できれば、余裕をもって一般知識の勉強にも取り組んでもらいたいですが、直前期でもやる価値はあることを覚えておいてください。

「そこそこは拾えるようになりたい」という方は、ぜひ上記の3点を意識してみてください。

 

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《その頻出テーマは出題されません》

毎年、たびたび「自然科学は頻出テーマだけやろうと思うのですが、どうですか?」という質問を受けます。

私の答えは「無理なジャンルは切ってもよいので、薄く広くやってください。」に加えて、「受けたい試験がはっきりしているなら、その試験で直近3年で出題されたジャンルは切ってもよいですよ」と答えるのが毎回のお決まりです。

例えば、ある試験で20年分の出題テーマを分析すると、数的処理では「確率」が毎年出題されてます。これは文句なく頻出度Aの頻出テーマです。

同じ試験で20年分の地学の出題テーマを分析すると、「惑星」から20年間で4問(4回)出題されています。これも参考書などでは、頻出度Aの頻出テーマとして扱われます。…がちょっとさっきとは話が違います。

お気づきですよね? 地学は1問しか出題されないとなれば、20年間で20問、そのうち4問”も”出題されれば、頻出度Aではありますが、5年に1回程度しか出題されません。

特に前年に「惑星」が出題されているなら、その試験で今年も「惑星」が出題されることはまずあり得ないでしょう。これが「その頻出テーマは出題されません」という一見すると矛盾している言葉の意味です。

頻出テーマであっても、過去3年間に出題されている場合、今年出題される可能性は非常に低い、つまり、切ってしまうということも視野に入れることができます。

もちろん、「無機化合物」などの大きな括りで捉えれば、2年続けて出題されることもありますが、前年が「金属」であれば、今年は「気体」から出題されるなど、違った範囲から出題されます。

私たち講師は長い目で傾向を見て、テーマごとの頻出度について捉えますが、受験生の皆さんが受けるのはその1年だけです。捉え方を間違えると、判断を誤ります。注意してください。

結論として、ある特定の試験の合格だけを狙っている人は、その試験の過去の出題テーマから絞って勉強をすることも有効です。

複数の試験の併願を考えている方は、結局のところ、テーマで絞るのは難しくなるので、無理なジャンルは切って、薄く広く勉強することを心がけるとよいと思います。

 

〈まとめ〉
・受験する試験での各科目の出題数を確認し、得点プランを考えてみましょう。
・無理なジャンルや難問は切ってもよいので、基本事項を中心に幅広く勉強をしましょう。
・一般知識は、とにかく丸暗記で得点できます。即効性の高いジャンルであることを意識しましょう。