教養論文のロジック

[H30特別区Ⅰ類]

日本の将来を担う子どもたちは国の一番の宝であり、子どもたちが自分の可能性を信じて前向きに挑戦することにより、未来を切り拓いていけるようにすることが何よりも重要です。しかし、現実には、貧困が世代を超えて連鎖し、子どもたちの将来がその生まれ育った家庭の事情や環境などによって左右されてしまうことも少なくありません。

このような状況を踏まえ、社会における子どもの貧困問題について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。

大学で教養論文の講義と添削をしています。政策、取組みについて知っておくことも大切ですが、それ以上に「文章力」で差がつくことを意識しておきましょう。

以前、言葉の使い方(熟語)の話を中心に記事にしましたので、こちらも参考にしてみてください。

教養論文の評価を上げるためには何が有効でしょうか。

今回は「ロジック(思考の筋道)」について、触れてみたいと思います。…最近、添削をしていると、この部分の弱さを感じることが多いです。どんなに政策を知っていても、筋道が適当でなければ、評価はされませんので注意をしましょう。

昨年の特別区の問題文を例として挙げました。皆さんはどのような内容で論を進めようとするでしょうか。

まず重要なのは、「テーマ」に沿って書くことです。本問のテーマは「貧困の連鎖」ではないことに気づいたでしょうか。冒頭を読むと、「子どもは宝」であり、「子どもが未来を切り開いていけることが何より重要」とあり、さらに「子どもの貧困」への取組みと書かれています。

「貧困の連鎖」という将来的な話も踏まえる必要はありますが、メインテーマは目の前にいる「子ども」を救うことです。

文章理解の問題を解くように、出題テーマ・意図を読み取ることがまずは第一歩になります。ここがずれてしまうと、そもそも問題文の問いかけに対して、フィットしていないため、どれだけ政策を丁寧に書いても評価は下げざるを得ません。

このことに気づき、「子どもの貧困」の解決策として、教育格差の解消、奨学金の充実などを書いたとしましょう。問題文にも「貧困の連鎖」や「未来を切り拓く」ことを踏まえるように書いていますので悪くはありません。

しかし、「ロジック」という点において、疑問は残ります。「子どもの貧困」は、教育格差の解消、奨学金の充実で解決されるのでしょうか。

実際にNPOや自治体の取組みとしては、教育面でのサポート以外にも、居場所の確保(親が働いていて家にいないケースが多い)、食事の提供(親が忙しく働いていて食事が疎かになっているケースが多い)、生活習慣の改善指導、就学時に必要なものについて現物給付などが行われています。今後もこれらの拡充が望まれます。

「子どもの貧困」の解決について書くのであれば、そこに合わせた対策を書き、読み手が納得するようなロジックで構成する必要があります。

この辺りの筋道がしっかりとしている論文は、当たり障りのない対策であっても、非常にスムーズに読むことができます。一方、問題文とのずれや、ロジックで疑問が生じると、違和感を感じながら最後まで読み進めることになり、評価も下げることに繋がります。

論文を書く際には、思考の筋道にずれがないか、そんな点もチェックするように心がけてください。