教養論文の評価を上げるためには何が有効でしょうか。

Q. 模擬試験を何度か受けましたが、教養論文の評価がなかなか上がりません。内容的にはそこまで薄くないと思うのですが、何か修正するポイントはあるのでしょうか。

 

〈今回のテーマ〉
・教養論文の評価のポイントは何か。
・内容面以外で評価を上げるために必要なことは何か。

 

《内容が重要…なだけではない》

教養論文の勉強というと、政策などの知識面の勉強に重点を置いている方が多い印象を受けます。もちろん、決してそれが間違っているというわけではありませんし、最低限の知識、関心が無ければ、論文を書くことはできないでしょう。

「専門記述」という試験が存在しています。こちらはまさに専門性の高い内容の知識を記述させる問題です。

それとは別に「教養論文」という試験がある意義を考えてみると、これが決して「専門性の高い内容の知識」を問うだけのものではないことがわかります。

それでは、教養論文において、内容面以外でどのようなことが問われているか整理しつつ、受験生がやってしまいがちなことについて触れてみたいと思います。

 

平成29年度 特別区Ⅰ類

少子高齢化が急速に進み、人口減少社会を迎える中で、社会の活力を維持し、持続的成長を実現していくために、社会のあらゆる分野において女性の活躍が期待されています。一方で、女性を取り巻く社会環境は、働く場での男女間格差の問題や家庭生活における役割の偏重など、女性の意欲や能力が十分に発揮できる状況にあるとはいえません。このような状況を踏まえ、社会のおける女性の活躍推進について、特別区職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。

 

1.出題の趣旨についての理解度

設問に沿って、テーマに合わせた内容を書くかが重要です。

上記の問題で、「あ! 待機児童対策を準備していたから、これで書こう!」とやってしまう人がいますが、ここでのテーマは「社会のおける女性の活躍推進」です。待機児童対策だけでは足りません

本問は「待機児童対策について述べよ」ではありませんので、どれだけ充実した内容で書いたとしても、テーマがずれている以上評価は高くならないでしょう

男性の家事参加や育児休業取得をどうやって拡大していくか、一度、職を離れた女性が再就職する際のマッチングの支援など、「社会のおける女性の活躍推進」というテーマに合わせることが重要です。

なお、ここで「企業における女性管理職の増加」はどうでしょうか。国であれば、企業に対してそのアプローチは可能かもしれませんが、区でどこまでできるかは疑問です。

出来ないとまでは言いませんが、区の取り組みでフィットさせるのは難しいでしょう。書くのであれば、地域の中小企業など、区と関係しそうなところに焦点を当てる必要があります。

問題文に「区の役割」が問われていれば、区でやれることを書くべきですし、「国の役割」が問われていれば、国でやれることを書くのが基本です。

ある程度、問題文が長い場合、書くべき内容は自ずから決まってくると言っても過言ではないでしょう。問題文の趣旨に合わせることが重要です。

 

2.わかりやすい構成

矛盾や飛躍が無く、論旨を明確に記述していくことが重要です。構成については好みの部分もあるかと思いますが、一例を挙げれば、このような感じでしょうか。

 

(1)現状について(後述の内容に関連した現状)

(2)一行で結論(「女性にとっての選択肢が広がる社会」)

(3)具体策

Ⅰ.働き続けることのできる環境整備(保育施設、ベビーシッターなどの充実)

Ⅱ.辞めた後に社会復帰しやすい環境整備(人材のマッチング、在宅勤務支援)

Ⅲ.男性の育休取得、家事参加の推進

(4)まとめ

 

構成については好みの部分もあると思いますが、自分なりの「型」を持っておくのが理想です。問題のテーマに合わせて、その「型」に入れていくとよいでしょう。

 

3.文章そのもののクオリティ

受験生の論文を添削していると、内容面よりも、むしろ文章面で気になることの方が多いです。基本的には、文章は短くすっきりと書いてある方がわかりやすいでしょう。

ただし、文章そのものについては、人によって大きな差があり、実際にその人の書く文章を見てみないと何とも言えない部分もあります。

そんな中、文章そのもののクオリティについて、自分で向上させる方法をここでは取り上げたいと思います。

 

 

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《皆さんは適切な「熟語」を使えていますか?》

もしよければ、ちょっと試してみてもらいたいことがあります。以下のH29の特別区の問題文を2~3回読んでみてください。

 

平成29年度 特別区Ⅰ類

少子高齢化が急速に進み、人口減少社会を迎える中で、社会の活力を維持し、持続的成長を実現していくために、社会のあらゆる分野において女性の活躍が期待されています。一方で、女性を取り巻く社会環境は、働く場での男女間格差の問題や家庭生活における役割の偏重など、女性の意欲や能力が十分に発揮できる状況にあるとはいえません。このような状況を踏まえ、社会のおける女性の活躍推進について、特別区職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。

 

……

読んでもらえたでしょうか? 問題文に書かれている内容がだいたいこんな感じだなというのが掴めていただければオーケーです。

それでは、内容を掴めていると思った方は、一言一句同じである必要はありませんので、先程の「問題文」を作成してみてください。

「えっ?」と思った人もいるかもしれませんが、自分なりの文章で、先程と同じようなことを問う「問題文」を作ってみてほしいのです。

書いてみると…かなり極端な例ではありますが、以下のような文章になっている人もいるのではないでしょうか。

 

平成29年度 特別区Ⅰ類

少子高齢化がだんだんと進み、人口減少社会になっている中で、社会全体がいきいきとする状況を保ちながら、成長を続けていくために、社会のあらゆるところで女性の活躍が望まれます。そのような中、女性の周りの社会環境は、働く場での男女の差の問題や家の中での役割が女性だけに偏るなど、女性のやる気や力が十分に出せる状況にあるとはいえません。このような状況を踏まえ、社会のおける女性の活躍を進めることについて、特別区職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。

 

この文章が何か間違っているわけではありません(正直、このレベルで書けていれば及第点です)。しかし、実際の問題文と比べると、いくらか「ゆるい」印象を受けます。

その理由は「適切な熟語」を用いていないからです。

例えば、「○○に変わってきている」という表現ですが、「変化」という言葉があります。単純に増えたのであれば、「増加」「上昇」、急であれば「急増」と言えますし、もし、悪い状況から良い状況に変わったのであれば、「好転」「改善」という言葉があります。

よく冗談半分で言うのですが、論文の答案用紙は一瞬見ただけで、ある程度の評価はできてしまいます。熟語が使えず、ひらがなを多用している場合、答案用紙がすかすかに見えます。薄い印象でしょうか。熟語がしっかりと使えている人は中身が詰まっているように見えます。

ぜひ、文章そのもののクオリティに自信のない人は、本試験の問題文や白書のような政府刊行物などで、「熟語」の使い方を学び、自分のものにしていきましょう

先程の問題文だけでも

「急速」、「活力」、「維持」、「実現」、「分野」、「期待」、「偏重」、「発揮」

など、これまで自分が使えていない表現があるのではないでしょうか。

「ああ、こういう時に、こんな熟語を使えばよいのか」という視点で問題文を読んでいくと、得るものも多いでしょう。

 

〈まとめ〉
・教養論文は内容面以外も目を向けましょう。
・問題文の趣旨を正確に読み取り、それにぴったりと合った内容を書くように心がけましょう。
・構成については、自分なりの「型」をもつように心がけましょう。
・文章のクオリティは「適切な熟語」を使えることで上がります。