数的処理でパターンを覚えた後の勉強を知りたいです。

Q. 数的処理の勉強を一通り終え、解法や目の付け所などもある程度覚えました。ただ、まだ点数にムラがあります。今後はどんな点に意識をして、復習をすればよいのでしょうか。

〈今回のテーマ〉
・数的処理の問題を解くプロセスを見直してみましょう。
・意外と受験生が力を入れていない勉強は何か。

 

《「認識」と「想起」と「処理」》

これまで数的処理の各テーマについての勉強法をお話をしてきました。特に強調してきたのは「覚える」こと。知識や解法パターンを覚えることは、まず何よりも先にやってほしい勉強です。

しかし、実際のところ、これだけで数的処理の問題が解けるようになるかというと、そうはうまくいきません。

「途中までは合ってるのに、最後の詰めが甘い」とか、「ケアレスミスばかりで点数が取れない」など、しっかり正解できないという人も多いのではないでしょうか。

そこで今回は「覚える」次のステップの勉強のお話をして行きたいと思います。

今回は少し遠回りに思えるかもしれませんが、まず数的処理の問題を解くプロセスをひとつひとつ見直していきましょう。

数的処理の問題を解くプロセスは次の(1)~(3)の順で進みます。

(1)認識:問題文を読み、どのジャンルに該当するかを「認識」する。

(2)想起:該当するジャンルの知識、解法パターン、着眼点を「想起」する。

(3)処理:想起した内容を元に、計算などの「処理」を行う

このすべてのプロセスをうまく処理することができて、初めて正解に辿り着けます。言い方を変えれば、解けなかった問題は、この中のどこかに穴があるはずなのです。

そうだとすれば、皆さんは解けなかった問題について、その穴を確認し、そこをケアしていけばよいわけです。復習の際に(1)~(3)のどこに穴があるのか、確認をしましょう。

ここに実は盲点があります。皆さん(2)は「ああ、ここの解き方、忘れてた」としっかりと復習をしてくれるのですが、(1)と(3)は見逃しがちです。

数的処理では(1)→(2)→(3)のプロセスとなりますが、経済学を除くと、他の多くの科目に(3)は存在しません。そして、(1)がネックになることもありません。

具体例に沿って、その意味を考えていきましょう。

《数的処理は「認識」も一苦労》

まずは(1)の「認識」についてですが、これの何がネックになるのかわからないという人もいるかもしれません。

一例を挙げてみましょう。

・行政法学上の損失補償に関する記述として、通説に照らして、妥当なのはどれか。

という問題文なら、(2)の「想起」で「ああ、損失補償だな」とその項目を思い出せばよいだけです。

・1分ごとに赤色、青色、黄色の3色のうちいずれか1色が点灯するランプがあり、いずれか1色が点灯してから1分後に、同じ色が点灯する確率は1/5であり、他の2色のうちいずれか1色が点灯する確率は2/5である。午前10時ちょうどにこのランプの赤色が点灯し3分後に青色が点灯したとき、青色が点灯した2分前の午前10時1分に黄色が点灯した確率として、正しいのはどれか。

という問題文はいかがでしょうか。「ああ、確率だな」では、実はアウトです。これは単純な確率ではなく、「午前10時ちょうどにこのランプの赤色が点灯し3分後に青色が点灯したとき、…」の1行がありますので、これは条件つき確率の問題です。

数的処理の場合は、問題文に「これは条件つき確率ですよ」と書いてあるわけではなく、自分で正確に認識をしなくてはなりません。これも一苦労です。

他にも文字の数に対して式の本数が少なければ、「不定方程式」と認識する必要がありますし、整数の性質のどのジャンルに該当するかわかりにくいものもあります。

判断推理などでも、いくつかの要素が絡むと、何に該当するかがわからず、無意識のうちにゼロベースで問題を解くことも多いでしょう。「ああ、あれと似ている」と思いだしながら解くのに比べると、負担は大きいです。

解けなかった問題を復習する際に、「これがどのジャンルに該当するか、きちんと判断できたか」を確認するようにしてみましょう。

これができるようになると、問題が解きやすくなるだけでなく、問題の取捨選択の判断にも磨きがかかるようになります。

先ほどの問題文を読んだ瞬間に「ああ、普通の確率は解けるけど、条件付き確率って、よくわからないんだよな。切ろう。」とできるようになることも大切です。

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《数的「処理」という名称がポイント》

次に(3)の「処理」についてです。

また、一例を挙げてみます。

・土地収用における損失補償の方法は、現物補償として代替地の提供に限られ、土地所有者又は関係人の要求があった場合においても、金銭の支払による補償はすることができない。

という問題文を読んだとき、「いやいや、原則、金銭保証だし。替地補償が例外でしょ」と想起して、×をつけて終わりです。「処理」はありません。

先ほどの条件つき確率の問題はどうでしょう。細かい解説は避けますが、まずは、午前10時ちょうどにランプの赤色が点灯し,3分後の午前10時3分に青色が点灯する場合の確率を、すべて「場合分け」をして書き出すという処理を行います。そして、「計算」で確率(①)を求めるという処理を行います。

同じく、その中で午前10時1分に黄色が点灯した場合を「場合分け」して書き出し、「計算」でその確率(②)を求めます。

あとは条件付き確率は「当てはまる確率÷すべての確率」という「式を立てる」処理を行います。具体的には②÷①になります。

このように数的処理という科目は、他の科目と異なり、「処理」の部分が非常に重要になってきます。…意外と皆さん、この「処理」の部分をおろそかにしていないでしょうか

数的「処理」という名前は、まさにこの「処理」の重要性を表しています。数や論理の要素を用いた「処理」ができるかどうかを問うているのが、この数的処理という科目です。

整数の性質や規則性、また、判断推理の問題では「試す」という処理が重要になります。空間把握では、以前、勉強法でも触れたように「名前を付ける」という処理が大切です。

そもそもの話として、「問題文(条件)を読み取る」というのも処理として、捉えることができるかもしれません。

着眼点やパターンを覚えることができて、(2)の「想起」ができているのに、最後まで解き切ることができないという方は、ぜひ(3)にも目を向けてみてください。

「確率が苦手なんじゃなくて、場合分けが全般的に苦手だ」や「判断推理の条件の読み間違いが多い」など、ジャンルとは別の弱点が見つかるかもしれません。

弱点を把握できれば、直していくことも可能です。自分が気づいていない弱点をしっかりと見極めていきましょう。

〈まとめ〉
・(1)認識→(2)想起→(3)処理のどこができていないかを確認しましょう。
・「認識」が正確にできることで、問題の解きやすさや、取捨選択の能力が向上します。
・「処理」の部分の弱点を見極めて、しっかり問題を解き切れるようにしましょう。