公務員試験に興味がありますが、何から始めれば良いですか?

Q.現在,社会人3年目ですが、公務員への転職をぼんやりと考えています。試験勉強の中身なども良く分かっていない状況で、とりあえずは独学で始めてみようと思っていますが、何をしてみるのが良いでしょうか。

 

〈今回のテーマ〉
・公務員試験の受験を考えはじめたとき、まずは何をするのが良いか。
・勉強計画の方針は、どのように立てていくとよいか。

 

《いきなり実際の本試験問題を解いてみましょう》

 

 最初の一歩の踏み出し方というのはなかなか難しいものです。公務員試験のスタートブックなどを読んでも、大学受験との違いがどこにあるかなど、直感的にはわかりにくく、何から始めれば良いかもピンときづらいかと思います。

 

 特に独学での勉強を目指されている方は、そのあたりの方針を立てるところが最初の大きなハードルになっているのではないでしょうか。

 

 そこでぜひおススメしたいのは、勉強を始める前に実際に試験で出題される問題を本気で解いてみるということです。

 

 公務員試験は国家公務員の試験でも、都道府県庁の職員、市区町村の職員の試験でも、一般的に五肢択一のマークシート式の試験が課されます。

 

 内容は大きく分けて2つあり、高校までの範囲である「教養試験」(国家公務員の試験では「基礎能力試験」という名称ですが、中身は同じです)と、大学の学部レベルの範囲である「専門試験」があります。

 

 一般に専門試験は、行政職(事務職)では法律・経済・政治などが、技術職では、建築、土木など、それぞれの専門分野について、問われることになります。

 

 なお、教養試験はほとんどの公務員試験で課されますが、専門試験については、一部の試験では課されません。試験によって異なりますので、興味のある試験について、まずはこの点を確認しましょう。

 

 ざっと試験の中身について、説明したところで、本題に入ります。以下のリンク先には、H29に特別区(東京23区)の職員採用試験で出題された本試験の問題が掲載されています。

 

 

 まずは冒頭にある「教養問題」をやってみましょう。著作権の都合でNo.1~8の「文章理解」が抜けていますが、現代文と英文の長文読解問題が本来は掲載されています。

 

 次にNo.10~28に掲載されているのが、今までやってきた数学と関係ありそうな、でも、ちょっと違うパズルのような問題があります。これが「数的処理」と呼ばれる科目で、どの試験でも教養試験の40%程度の配点を占める重要科目です。

 

 No.29~48は、高校までの範囲で世界史、日本史、地理、政治経済、物理、化学、生物、地学…などが1~2問ずつ問われています。大学受験では受験科目の1科目しっかりと出てくるものが、公務員試験では、ぽつぽつとこのような形で出てくるのが特徴です。また、時事や一般常識が問われることもあります。

 

 このように公務員試験は、大学受験とはだいぶ出題のバランスや内容が違うことがわかると思います。そのあたりをまずは肌で感じることが重要です。

 

 次に「専門試験」も余裕があれば、目を通していきましょう。一般に文系の方は、「事務」の問題を解くことになります。こちらの問題を見てみてください。

 

 No.1~5の憲法に始まり、行政法、民法と「法律系」が続きます。No.21からはミクロ経済学、マクロ経済学、財政学、経営学などの「経済系」、No.41以降は政治学、行政学、社会学などの「行政系」が出題されます。

 

 法学部出身だから「法律系」だけの勉強でよいかというと、一般的には「経済系」や「行政系」などの勉強も必要となります(選択解答制の試験もありますので、細かく戦略を立てれば、苦手な科目から逃げることもできますが、話が細かくなるので、詳細は別の機会に)。

 

 さらに理系の方や福祉など方は、それぞれの専門試験について、目を通してみてください。文系の方に比べると、出題される範囲が狭いです。一方で、自分の専門分野とピッタリ合う試験がなかなかないという人は、やはり専門外の勉強が必要となります。ただ、「事務」や「行政」に比べると、一部、採用人数が少ない区分を除き、競争倍率は低いです。勉強が報われる区分だと思います。

 

 試験問題を眺めながら、ざっと概要をお話ししましたが、できれば全問本気で解いて、採点をしてみましょう。なぜ、それをおススメするかは、以下で述べていきたいと思います。

 

フリー写真素材ぱくたそ

 

《中長期的な学習方針は「得点力」で決まる》

 

 公務員試験に合格するのに必要な学習期間は概ね「6~18か月」でしょう。もちろん、1日あたりに費やせる勉強時間によって大幅に変わってきます。

 

 それ以外に「現時点でどれだけ得点できるのか」によっても異なります。ほとんどの公務員試験で必要となる教養試験ですが、先ほど内容を確認した通り、これは高校までの範囲であるため、中学・高校・大学受験での貯金があるかどうかで、今後の勉強量が変わってきます。

 

 試験によって合格ラインは異なりますが、概ね50~60%と思っておけばよいでしょう。先ほどの特別区の教養試験の問題ですと、文章理解は掲載されていないので、単純にそこを除き、それ以外の全問を解くとすると、40問中20問正解できていれば、合格ラインに達することになります。

 

 なかなか初見でこのラインを超える人はいないと思いますが、もし超えていれば、教養試験の勉強はほとんどやらずに済むことになります。教養試験のみが課される試験であれば、勉強をせずに受験をし、採用される可能性も十分にあります。

 

 例えば、数的処理は全然できないけれど、世界史や生物などはできていて、14点程度取れたという人は、数的処理をやり込めばよいわけで、数的処理のテキスト&問題集だけを買って、合格ラインに乗せていくという方法も取れます。働きながらでも十分に独学で対応することができます。

 

 もし、40問中10問程度であれば、基本的にはゼロベースで勉強をすることになるでしょう。そうすると、なかなか空いた時間の勉強だけでは合格するには厳しいかもしれません。働いているのであれば、早朝や休日などに意識的に時間を作って対応をするか、勉強中心の生活に切り替える、もしくは2年計画にして長期間取り組むなどの必要が出るでしょう。

 

 教養試験の「得点力」によって、どのように勉強の方針が変わってくるかについて、お話をしてみました。公務員試験の中には、教養試験のみで受験できる試験(横浜市など)もありますし、近年では教養試験のみで受験できる新しい方式を採用する自治体(東京都や神奈川県など)も増えてきています。

 

 まずは「公務員試験の勉強に取り組むかどうか」を決めることが最優先課題でしょう。取り組むからには合格・採用を目指すことになるわけでして、合格の可能性と、それに必要なコスト(時間・お金など)を早い段階で正確に見積もる必要があります。

 

 現時点での教養試験での「得点力」がわかれば、中長期的にどの程度の時間と労力が必要になるかが見えてきます。「半年間、土日に本気でやれば受かりそう」や「本気で目指すなら、仕事を辞めないとダメそうだな」という感覚を掴むところからスタートすると、ライフプランも含めた計画が立てやすくなると思います。

 

 その上で専門試験の勉強をどうするか、どの試験を本命にするか、併願先はどうするか、ひとつひとつ決めていけばよいのではないでしょうか。

 

 3時間あればできることですので、ぜひ「本気で教養試験を解いてみる」を試していただいた上で、その先を考えてみていただければと思います。

 

〈まとめ〉
・実際の試験問題に目を通すことで、どのような内容がどんなバランスで出題されるかを知りましょう。
・「教養試験の問題を全問本気で解く」ことで、自分の「得点力」を把握しましょう。
・「得点力」が把握出来たら、そもそも受験を目指すかどうかを含め、中長期的な計画を策定しましょう。