公務員というのは、資格なのでしょうか?

Q.大学の先輩で学部のときに公務員試験に合格をして、院を出るタイミングで就職をした人がいました。公務員というのは、何か免許(資格)のようなものがあるのでしょうか。

 

〈今回のテーマ〉
・公務員は「資格」なのか?
・公務員試験の合格は何年間有効なのか?

 

《公務員の採用は、民間企業と変わらない》

 

 民間企業の人事の方が「公務員って資格ですか?」という質問をされるくらいですので、一般にはわかりにくいのかもしれません。「資格の学校TAC」で公務員講座をやっていますし、言われてみればもっともな疑問です。

 

 結論から申し上げますと、「資格」ではありません。民間企業の「採用」と何ら変わりはありません。先日、自分の教え子で3月末にある省庁を退職し、4月から地元の県庁で働く人と会いましたが、県庁の試験に合格をして採用が決まりました(彼は経験者採用枠でした)。普通の転職活動です。

 

 たとえば、A会計事務所で働いている税理士は退職しても、税理士という「資格」は持っています。B県庁で働いている公務員が、何らかの事情でその県庁を退職しても、特に「資格」が残っているわけでもありません。再度、B県庁で働くにしても、再度受験しないと復職はありません(もちろん、休職して復職は別です)。

 

 公務員のほうが採用試験が大げさで複雑なだけで、採用のプロセスも大きく変わりません。民間企業ではSPIのような軽めなテストですが、公務員試験では大学受験のようなレベルのテストになっているという感じです。

 

 では、質問者さんの先輩のようなケースはなぜ生じたのか。民間企業の場合、学部生のうちに採用が決まっていて、その後、院を出てから就職というケースは一般的にはないですよね。ただ、一部の公務員試験の場合、ちょっと変わったシステムがあるのです。

 

《「資格」ではないが、「名簿」に残る》

 

 国家公務員総合職、国家公務員一般職(大卒程度)、国税専門官、労働基準監督官の試験では、最終合格後3年間、採用候補者名簿に記載されます(その他の試験は基本的に1年間や年度内)。

 

 

 簡単に説明すると、最終合格後に省庁などの採用面接があるのですが、合格した年だけでなく、その翌年と翌々年まで、その採用面接(官庁訪問)を受けることができます。

 

 このシステムを活用することで、大学4年生のときに最終合格して、大学院生のときに、採用面接を受けるということが可能になるのです。

 

《3年間名簿記載の活用法》

 

 3年間名簿に記載されるということを活用すると、様々なケースに対応することができます。

 

(1)大学4年時に最終合格すれば、大学院への進学や、留学などの後、2年後までであれば、受験無しで採用面接(官庁訪問)を受けることが可能に。

 

(2)大学受験時に1年浪人をしている人は、大学3年生の時点で受験。もし、最終合格することができれば、4年生のときに、採用面接だけを受けることが可能に(…大丈夫と思いつつ、間違った情報を書くわけにはいかないので、人事院に確認しました)。

 

(3)最終合格すれば、他に一度就職をし、転職をしたくなったとき、受験無しで採用面接(官庁訪問) を受けることが可能に。すでに在職中の人は、タイミングに合わせて、翌年、翌々年の転職が可能に。

 

 もちろん、採用が保証をされるわけではありませんが、一度、合格をしていれば、選択肢が増えることにはなります。今の時代、人材不足は公務員も例外ではありませんので、門戸は大きく開かれています。

 

 公務員試験をせっかく受験するのであれば、このような仕組みはあることは頭の隅に入れておくことをオススメします。

 

〈まとめ〉
・公務員は「資格」ではありません。
・ただし一部の試験は「名簿」に記載される期間が3年間です。
・このシステムを活用することで、就職や転職の選択肢の幅が広がります。