他の受験生より出来ていない気がします。

Q.独学で勉強をしていると、勉強のペースも掴めず、他の受験生に比べて、自分はあまり勉強ができていない気がします。試験も近づいていますが、他の人は順調なのかと思うと、気持ちがざわざわして精神的に負けそうです。

〈今回のテーマ〉
・周りが気になるとき、どう対応するか?
・自分の実力を、どう正確に把握するか?
・いま抱える課題を、どう克服するか?

 

《コントロールできるもの、コントロールできないもの》

これは独学云々とは関係なく、予備校でも大学でもよく受ける相談です。どうしても、他の受験生が自分より勉強が進んでいるように見えるようです。模試の成績の話が耳に入ると、「自分よりもできている…」と思ったり、すでに時事対策をやっていると聞くと、「自分はまだ全然だ…」と不安になったり、むしろ、独学の人よりも気になることは多いようです。

私自身、人前に立って話す仕事をしていますが、若い頃は他の講師の評判が気になっていました。特に同じ科目を教えている講師の良い評判を聞くと、「ああ、自分はダメなのでは…」と悩んだこともあります。

私の場合、読書好きということもあり、本から学ぶことが多いのですが、メンタルコントロールについては、スポーツ選手など、一流のプロはどのような意識を持っているのかを学びました。

多くの本を読んだ上で、自分なりにまとめると、コントロールできるものと、コントロールできないものを区別することがポイントだと感じています。

例えば、「他人」は自分ではコントロールできません。自分がいくら思い悩んだところで、どうにもならないことです。1対1で行う対戦であれば、相手にプレッシャーをかけるなどの方法もあるかもしれませんが、何千人も受験生がいるのでは、何も影響を及ぼすことはできないでしょう。

また、「時間」もそうですよね。1日が24時間であることそのものは変えられないですし、試験までの期間の長さも変えられません。時々、「ああ、あと1か月ほしい…」と言う人もいますが、他の受験生も1か月増えますので、状況はあまり変わりません。

「社会情勢」も同じです。たとえば、採用人数が少ないことは悩んだところで変えようがありません。…ちなみに自分が受験した年度(最初の就職氷河期世代です)の、東京都Ⅰ類(行政)の採用予定数は60名程度…。2017年はⅠ類Bだけで450名程度…皆さんは恵まれています(ちなみに都は不合格でした…)。

周りや環境など、色んなことが気になるのは、誰もが同じです。でも、気になった後に、「自分でコントロールできることだけを気にしよう」と心がけるだけで、気持ちを整理して、勉強に集中できるのではないでしょうか。

1日が24時間であることは変えられませんが、隙間の時間を見つけることや、集中と休憩のリズムを作ることなどは、自分でコントロールできます。いい形で直前期の勉強に取り組んでください。

《「感覚」よりも「データ」を大切にする》

講師の立場から見ていると、すごく順調に勉強が進んでいるのに、「全然ダメです…」と口にする受験生の方は多いです。彼らは決して謙遜しているのではなく、本当に思い悩んでいます。公務員試験は範囲も広く、やっても終わらない不安があることは十分にわかりますが、不安になりすぎるのも勉強に支障をきたします。

そんな受験生の方に毎回アドバイスをするのは、「去年の本試験の問題を解いてみたら?」というもの。今の実力で去年の試験を受けたら、何点取れるか。もっと言うと、受かるかどうか。これが判明します。

ちなみにたとえば、東京都Ⅰ類B(一般方式)の試験問題ですと、以下のページにあります(文章理解は著作権により掲載無し)。合格ラインは行政で40点中26点くらいでしょうか。

http://www.saiyou2.metro.tokyo.jp/pc/selection/28/section-1b1-answer.html

文章理解は日頃の実力で換算し、合計22点くらい取れていればこれからの勉強量を考えると順調です。18点程度となると、まだ詰め切れていない課題がありそうです。

現在の実力が「データ」としてわかれば、今後の対応の仕方も見えてきます。例えば、数的処理の点数が足りなければ、そこを伸ばすか、もしくは他でカバーするか。文章理解と数的処理はまずまずだけど、一般知識(時事を含む)が取れていなければ、ここから知識詰め込みモードです。

「感覚」というものは、素早い判断には役に立つものですが、論理的に考えるには不向きです(ダニエル・カールマン著『ファスト&スロー』が詳しい)。「データ」をベースにして考えることで、今の状況を冷静に考えることができますし、その上で、対策も講じることができます。

不安が尽きない気持ちは私もわかりますが(公務員試験は、やってもやっても終わらない…と、自分が受験生の時も思いました)、「データ」を参考にすれば、自分の課題もおのずから見えてきます。大切なのは悩むことではなく、課題を見つけ、対応をして点数を伸ばすこと。これが最も大切です。

試験勉強は人と争うものではなく、基準の点数に届けば合格するものです。周りのことを気にせずに、自分自身のことだけを見て、より良い結果を目指して頑張ってください。

〈まとめ〉
・コントロールできないことで悩まず、自分のできる範囲のことで対応策を考えるほうが良いでしょう。。
・自分の実力は「データ」で冷静に捉えれば、不安も和らぎます。
・「データ」で課題を見つけ、それを対応することで合格に近づきましょう。悩むことは「目的」ではないことに注意を。