数的処理の点数が伸びません(その2:判断推理編)。

 

Q.数的処理の勉強を勉強をしていますが、なかなか新しい問題が解けるようになりません。前にやった問題も忘れてしまっています。何か勉強方法が間違っているのでしょうか。

 

〈今回のテーマ〉
・数的処理の勉強の勉強の基本方針とは?(判断推理)
・判断推理の勉強で注意すべきポイントは?

 

《判断推理の勉強方針(Step.1.2.3)》

 

 前回に引き続き、数的処理の勉強の仕方です。同じ数的処理でも、数的推理と判断推理では勉強の方針も変わってきます。

 

 前回の数的推理の勉強の仕方については、以下の記事を参照してください。

 

【ブログ記事】数的処理の点数が伸びません(その1:数的推理編)。

 

 今回は「判断推理」についての話をしていきたいと思います。

 

 判断推理のような論理パズルの問題においても、まずは「覚えること」が重要になります。これについては、以前のブログをまず参考にしてください。

 

 

【ブログ記事】数的処理が苦手なんですが、どうすればよいですか?

 

 

 数的処理の中で、判断推理というジャンルがどういう特徴があるのかを確認していきましょう。

 

 数的推理(速さ、確率、図形など)と判断推理(試合、位置関係、嘘つきなど)を比較してみると、その特徴がわかりやすいでしょう。

 

 前回のブログ記事で触れたように、数的推理は速さ、確率、図形など、それぞれのジャンルが独立していて、関連性が低いのが特徴でした。

 

 速さの問題が解けなくても、図形の問題には影響はありません。薄く広く苦手なところまで満遍なくやるよりも、まずは点数につながりそうなところから手をつけて、苦手なところは後回しにする。

 

 このようにすることで、最小限の勉強で一定の点数を取れるようにするのがポイントです。どうしても、数的推理を完璧にしようとして、負担が大きくなってしまっている人がいますが、まずは取れるところを取るのが大切です。

 

 それに対して、今回触れていく判断推理はどうでしょう。試合、数量を推理する問題、位置関係など、ジャンル分けはされているものの、どれも同じような問題です。速さと図形ほどの大きな違いはありません。

 

 つまり、数的推理の速さと図形のように、試合の問題と、数量を推理する問題を別のジャンルと分類して、勉強をする必然性はありません。

 

 また、ある程度、勉強された方はご存知かと思いますが、判断推理の問題は、どのジャンルに分類されるのかわからないような複合的な問題も数多く出題されます。

 

 同じトーナメント戦の問題でも、リーグ戦とトーナメント戦の両方が混ざるような問題、トーナメント戦に勝ち点など数量の要素が入る問題では、アプローチの仕方が大きく変わってきます。

 

 数的推理の問題で、速さと図形が混ざるような問題は非常に稀です(地図上の道路を移動した速さと時間から距離を導き出し、それを用いて作図から図形にという問題も出題されたことはあります)が、判断推理でジャンルが混ざることはごく一般的です。

 

つまり、判断推理は「ジャンルごとの関連性が高く(ジャンルが混ざるのが一般的)、各ジャンルでの着眼点・解法パターンが共通する(抽象度が高い)」のが大きな特徴です。

 

 このように判断推理ではジャンルが混ざることが一般的だということを認識していないと、典型的な問題以外には太刀打ちできないことになります。

 

 この点を踏まえて勉強法を考えてみると、判断推理の勉強の基本方針は次のようになります。

 

[Step.1]
 各ジャンルごとの学習。基本テキスト・基本問題で「基本の図表」と「着眼点」を覚える。また、各ジャンルごとの「共通点」を見出す。

 

[Step.2]
 過去問集などで、ジャンルを気にせず、毎日1問以上解く(継続する)

 

[Step.3]
 本試験問題を通しで解き、実力チェックをする。

 

 それぞれについて、詳細を述べていきましょう。

 

[Step.1]
  各ジャンルごとの学習。基本テキスト・基本問題で「基本の図表」と「着眼点」を覚える。また、各ジャンルごとの「共通点」を見出す。

 

 先日のブログで書いた通り、まずは「覚える」ことをスタートにしてみましょう。判断推理で「覚える」といってもピンと来ないかもしれません。

 

 数的推理はジャンルごとに、重要な知識や解法パターンなどがはっきりしていますが、判断推理ではそのあたりがつかみにくいので、皆さんは判断推理を「センス」や「感覚」的なものとして、捉えているかもしれません。

 

 しかし、以下の2点は基本問題で覚えていってもらいたいポイントです。

 

(1)用いる図表のパターン
(2)使われる条件のパターン

 

 それぞれについて、述べていきます。

 

(1)用いる図表のパターン

 

 判断推理の授業のときに、よく受験生の方から耳にするのが、「図表さえ描ければ、解けるんですけど」という言葉です。ある種、核心を突いています。

 

 判断推理の問題で最も重要なのは、まずはしっかりと条件が見やすい状況を作ること。私が良く使う表現ですと、「可視化」することです。

 

 まずは基本となる問題で、どのような問題では、どの図表を使うと状況が「可視化」しやすいのか、これをある程度、覚えていくことが重要です。

 

(2)使われる条件のパターン

 

 判断推理の問題を解いていくと、問題を解く上でカギとなる条件があります。作問者は、皆さんが簡単に解けないように何かしらのハードルを設けるわけで、最初のうちはなかなかそのハードルを越えることができません。

 

 しかし、一度、問題が解ければ、作問者がどのようなハードルを設けるのかがわかります。このような条件のパターンを覚えて、自分の中に蓄積していくことが重要です。

 

 よくあるのは「合計」を用いる形のハードルでしょう。「AとBとCの3人で合計7点で、0点はおらず、同じ得点もいない」と書かれていても、最初はピンと来ないかもしれません。

 

 ですが、(1、2、4)しか組み合わせがないという、こういうハードルだと知れば、次からは引っかからなくなります。これも覚えていくことで対応できます。

 

 各ジャンルごとの学習で(1)(2)を意識していくと、だんだんとどのジャンルでも、似たような考え方で図表を作り、似たような条件でハードルが設けられていることがわかってきます。復習の際には、その「共通点」を見出せるとよいでしょう。

 

 判断推理はたびたび複合的な問題も出てきます。完全にジャンルでごとで切り分けて勉強している人は、なかなか対応しづらいですが、日頃から「共通点」を意識しながら解いている人はうまく対処できるようになります。

 

 判断推理の問題にも、嘘つきや方位のように独立性の高いジャンルの問題はあります。しかし、基本的には判断推理全体を1つのジャンルとして捉えて、「基本の図表」と「着眼点」を覚えていくとよいでしょう。

 

[Step.2]
  過去問集などで、ジャンルを気にせず、毎日1問以上解く(継続する)

 

 数的推理の勉強の質問で、「1日1問ずつでも解いたほうがよいですか?」という質問を受けます。先日のブログ記事で、数的推理はジャンルごとにまとめて解く時間を作ってほしいという話を書きました。

 

 判断推理については、ぜひ「1日最低1問を継続的に実践」してください。ジャンルごとに解く必要はなく、むしろランダムに解いていく方が良いでしょう。複合的な問題が入っているとなおよいです。

 

 試合の問題を解き、位置を推理する問題を解き、嘘つきを解き…と違った問題を解いていきながらも、実は「図表に対する考えは同じだな」とか、「これ、前にも出てきた条件(ハードル)だぞ」、「まったく見たことがないけど、同じ考え方で解けた!」と気づいていきます。

 

 判断推理のようなジャンルの独立性が低い(抽象度が高い)ものは、やはり、自分の頭で考えてじっくり取り組む勉強が有効です。あまり「慣れ」という言葉を使うのは好きではないですが、実際、継続的な積み重ねはとても重要です。

 

 例えば、テニスでボレーをするときのラケットの使い方、体の使い方(重心移動)などをいくら習っても、実際に繰り返しそれを体に染みつけなければ、体は思うようには動いてくれません。

 

 スポーツ以外でも、書道でも運筆の仕方(筆の先を入れる角度とか、文字によってあります)、料理でも火の入れ方(弱火の感覚…弱ければよいわけではない)など、知識が頭にあっても、意識をして繰り返し練習しなければ、思い通りにはなりません。

 

 効率的な勉強ということで、パッとできるようになりたいと思う人も多いとは思います。数的処理全般にも言えることですが、特に判断推理のようなジャンルは、じっくりとした積み重ねをないがしろにすると、力はつきません。

 

 また、将棋の話になりますが、わかりやすい本を何冊も読んでも、結局は自分の頭で考えないとダメなんですよね(私自身、ついつい色々な本を買ってしまうダメな人ですが…)。毎日コツコツ空いた時間に詰将棋や次の一手を考える問題を解いて初めて力がつきます。それも継続的にやることで自然と、知識が力として染みついてきます。

 

 じっくりと継続的に自分の頭で考える練習をしていきましょう。もちろん、Step.1で解いた問題との「共通点」をチェックすることも忘れないようにしてください。

 

[Step.3]
 本試験問題を通しで解き、実力チェックをする。

 

 判断推理は一般に数的推理に比べると、1問あたりにかかる時間が長くなります。そして、数的推理に比べると、はまりやすいというのも特徴です。そうなると、難しいのは試験全体でのタイムマネジメントです。

 

 前回の数的推理の勉強法のブログ記事でも書きましたが、実際の本試験では、ひと目で見て、ポイントを思い出し、スムーズに作業をしていくことが求められます。しかし、判断推理では、一見すると、どのタイプか判別しづらい問題も出題されます。

 

 ある程度、勉強を進めていくと、条件を図表に反映しやすく、複雑なルールや設定がない問題が解きやすいが取り組みやすい問題だとわかるようになってきます。見たことが無い問題の中から取捨選択をして、短い試験時間の中で、一定の点数が取れるような練習が必要をしましょう。

 

 また、判断推理を単純にジャンル別で勉強をしていた人は、このタイミングで意外と解けない問題が出てくるかもしれません。特に国家系の問題は難易度の高い問題も多いです。近年の試験問題で、自分の実力チェックをして、どれだけ点数が取れそうかも確認してください。

 

 

 

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《判断推理は意外と甘くない!?》

 

 もう1点、判断推理について、勘違いしがちなポイントを挙げておきたいと思います。それは、「判断推理は決して甘くはない」という話です。

 

 受験生の皆さんだけでなく、講師なども含めて 「判断推理は、数的処理の中で点数を稼ぐところ」という認識を持っている印象を受けます。たしかに判断推理は、算数・数学が苦手な人にとって、「計算」というトラウマが関係しない分、取っつきやすい印象はあるのでしょう。

 

  しかし、実際に本試験でそんなに判断推理で点数が取りやすいかと言われると、そんなことはありません。まず、数的推理など他に比べて、複合的な問題の出題が多いため、パターン化して解けるような問題が少ないです。そういう意味では、ある程度勉強した人にとっては、数的推理の方が本試験での点数が見込めます。

 

 例えば、確率の問題であれば、設定を見たことが無かったとしても、「ああ、確率なら、○○して、××して、これで解けばいいな」と方針が立てやすいのですが、判断推理の場合には、方針を立てるところから、じっくり頭を使って考えなくてはなりません。

 

 そして、判断推理は「本試験ではまりやすい」という特徴があります。まず、単純に他のジャンルに比べて1問当たりの時間がかかりますし、難易度が推定しづらいため、取捨選択についても、多少手を付けてみないと判断しづらいです。このように時間のロスが大きいので、判断推理だけで点数を稼ごうとすると、試験時間全体への影響も大きくなります。

 

 そして、何より判断推理の正答率が高いかというと、決してそんなことは無く、他のジャンルと大きな差はありません。

 

 計算をしなければならない数的推理、図形が出てくる空間把握など、どうしても取っつきにくいため、判断推理で点数を取ろうという人もいるでしょう。

 

 基本的な戦略として悪くはありませんが、「バランス」を間違えないように気をつけてください。「数的推理」や「空間把握」であっても、取れそうなジャンルや基本問題を拾うだけで、点数はより安定します。その上で判断推理はしっかりと勉強するくらいがちょうどよいと思います。

 

 実際のところ「判断推理は全問正解、その代わりに数的推理や空間把握は完全に切る」はなかな難しい印象です。…ただ、これについては、それぞれの実力次第ですので、本試験の問題で試して判断してみるのがよいでしょう。

 

 本来、有効な勉強方法は人によって千差万別です。ただ、自分の方法がうまくいっているかどうか、これを「実際の本試験問題で試して、実力をチェックする」ということについては、唯一の方法と言っても過言ではありません。

 

 そのあたりを踏まえた上で、あくまで一般論として、「バランス」を意識した勉強をおすすめします。

 

 ぜひ数的処理の勉強に悩まれている方は、「数的推理は、取れそうなジャンルをしっかりと。判断推理は、1日1問以上ジャンルを気にせずコツコツと」という勉強を試してみてください。

 

〈まとめ〉
・各ジャンルの基本問題で「基本の図表」と「着眼点」を覚えましょう。
・ジャンルを気にせず、1日1問以上を継続的に、自分の頭でしっかりと考えて解きましょう。
・判断推理は取っつきやすいですが、簡単ではありません。数的推理などもバランスよく勉強しましょう。