Q. 公務員を目指して試験勉強中ですが、民間企業への就職活動をするべきかどうか悩んでいます。実際のところ、試験勉強と両立して就職活動はできるのでしょうか。
〈今回のポイント〉
・公務員試験の勉強と就職活動の両立をする際の注意点は何か。
・民間の就職活動も行うメリットは何か。
《事前にバランスを決めましょう》
これは大学で多くの学生さんから受ける質問です。結論を言ってしまえば、「十分に可能」です。ただし、バランスに注意をしましょう。
早い時期に内定が欲しいから、むやみやたらにエントリーをして、面接を数多く受けるというのは、おススメしていません。エントリーシートの作成、SPIなどのテスト、そして、面接、これを数十社行えば、勉強時間は無くなります。
時間は有限ですので、まずは自分なりの優先順位を決めて、どの程度の時間を試験勉強と就職活動に使うのか、バランスを決めておきましょう。
杓子定規に言えば、公務員試験メインで勉強と就職活動の両立を考えるのであれば、就職活動は、業種を絞るなら1~2業種に,企業数を絞るなら10社程度くらいを目安にするとよいでしょう。
ここでは、いくつかの具体例を挙げてみたいと思います。
東京都庁で働きたいと決めていた学生(他の公務員は興味なし)は、公務員試験については、完全に都庁に特化し、かなりの時間を民間企業の就職活動に割いていました(【就活期間中】勉強:就活=4:6)。
金融・経済に興味を持っていた学生は、国家公務員(国家総合・国家一般・財務専門官)に向けた学習を中心に行い、あとは大手金融機関と興味のあるいくつかの企業に絞り就職活動をしていました(勉強:就活=8:2)。
興味のある業種を中心に複数の企業の説明会に参加しても、どうも民間企業への就職がピンとこないという学生は、民間企業を1社も受けずに公務員試験に特化しました(勉強:就活=10:0)。
地元での就職が最優先の学生は、公務員試験については、県庁(地方上級)と市役所に絞った勉強をし、あとは地方銀行などを中心とした地元企業の就職活動を行っていました(勉強:就活=7:3)。
皆さんは自分はどのようなプランにするか思い描けたでしょうか。このような話をするのには理由があります。
就職活動を始めると、ついそちらに力を入れてしまい、勉強がおろそかになってしまう人もいます。就職活動を始める時期は、一番、試験勉強に力を入れる時期と重なります。最も志望しているのは公務員なのに、予定以上に就職活動に時間が割かれてしまっては本末転倒です。
また、就職活動が本格化すると、予備校や大学で「周りが内定をもらい始めたのに、自分はまだ試験すら始まっていない」と不安を口にする学生さんがいます。焦る気持ちは十分わかりますが、試験日程は変えられません。
それではどうすればよいのか。いずれのケースもバランスを考えながら、あらかじめ自分の納得する計画を立てておくことが重要でしょう。
事前に自分のスケジュールの中に就職活動を組み込んでおく。もしくは、周りの就職活動が自分に影響しないように「自分は公務員試験だけを受ける」としっかりと決めておくことをオススメします。
《民間就活は「なぜ公務員か」を考えるきっかけになる》
大学の学生さんに対して、個人的には「せっかくなので、勉強に負担にならない範囲で、就職活動はしてみましょう。」と言っています。「就職活動など、勉強の邪魔でしかない」という見解もありますが、自分としては以下のような理由から推奨しています。
1点目は単純に「面接の練習になる」からです。一般に公務員試験の面接よりも、民間企業の面接の方が先に行われます。第一志望の面接が、初めての面接であることに不安を感じる人もいるでしょう。
それならば、公務員ではないものの、事前にどこかの企業で面接を受けておいた方が良いという非常に単純な理由です。
2点目は「仕事を多方面から見る」きっかけになるからです。たとえば、やりたい仕事が「まちづくり」だとしましょう。「まちづくり」は行政のだけの仕事ではありません。鉄道会社は沿線開発に力を入れていますし、不動産ディベロッパーのような業種も存在しています。
公務員試験の面接の際に、「やりたい仕事」は定番の質問のひとつです。行政の視点だけではなく、民間企業の視点など、多方面からの視点を持つためにも、就職活動は有効でしょう。
3点目は「なぜ公務員か」を話せるようになるためです。たとえば、塾講師のアルバイトをきっかけとして、東京都で教育行政に携わりたいとしましょう。
定番の質問は「どうして、教育業界ではないのか?」、「教育がやりたいのであれば、教師ではないのか?」、「文部科学省の方がやりたいことがやれるのでは?」などです。
もし就職活動で教育関連の企業の説明会や、面接を受けていれば、「教育業界も考え、いくつかの企業の面接も受けましたが、○○や××について、やはり行政として…」など、自分なりに考えた経緯を話せるようになります。
「教育がやりたい」と話しておきながら、東京都の教育行政しか話せないのでは、面接官に「面接用に用意したのでは?」と思われても仕方ありません。
2点目ともつながる内容ですが、就職活動は、やりたい仕事について、それを「なぜ公務員」としてやりたいかを説明できるようになるためのきっかけになるでしょう。
以上が、試験勉強に負担にならない程度の就職活動をオススメする理由です。就職活動がつい楽しくなってしまう人もいます。繰り返しになりますが、バランスには注意してください。