「本試験を通しで解く」効能

過去のブログでも何度か取り上げている「本試験を通しで解く」ことについて、試験が近づいているこのタイミングで改めてお話ししたいと思います。

この時期、試験に対する不安を抱える受験生の方からたびたび相談を受けます。慰めて励ますだけであれば、簡単にできるのですが、私の仕事は受験生の皆さんを合格させることです。

医師が治療に当たる際に、問診はとても重要ですが、前提として必要となるのはデータです。血液検査、レントゲンやCTによる画像診断など、客観的なデータが無いと、効果的な治療を行うことはできません。

それと同じように、合格するための効果的な勉強方法を考える際には、現時点での習熟度を測るためのデータが必要です。

志望先の「本試験問題を通しで解く」、できれば、単年ではなく、3年程度の複数年の結果があると、診断は非常にしやすくなります。

一般的に専門科目と教養科目であれば、専門科目の方が点数は伸ばしやすいので、専門科目の点数が思ったほど伸びていないというのであれば、そちらを優先すべきでしょう。

専門科目の中でも、出来にムラがあると思います。この時期は、法律や経済は以前から取り組んでおり、出来はまずまず。でも、行政系科目がまだ仕上がっていない。このため点数が確保できていないという人が多いでしょうか。

このケースはある意味では、順調と言えるでしょう。これから、知識の詰め込みをしていければ、十分に試験までには間に合うからです。

逆にこの時期になっても、経済がやはりできないという人もいるかもしれません。そのような人は、目指す試験にもよりますが、経済を選択せずに、他の科目でカバーする。また、経済の中でも暗記で取れるジャンルだけを押さえるなどの方法が考えられます。

これから試験までの数ヶ月、限られた時間の中で、合格するための期待値を上げるには、皆さん自身の「現状に合わせた勉強」が必要になります。

その勉強法を考える際には、前提としてデータが必要であることを意識してみてください。過去の行われた本試験は、自身の実力を測るためのデータとしては最適でしょう。

「過去の本試験を通しで解く」という方法ですが、目指す試験の過去問をすでに解いてしまった人は、他の試験種の問題を使っても良いと思います(できれば、同難易度のレベルの試験種)。

勉強方法として、同じ問題集を何度も繰り返して習熟度を上げるという方法もあります。これはこれで効果があると思います。

しかし、実際の本試験では、全く同じ問題が出題されることは稀で、同じテーマでも表現や論点が微妙に異なるケースがほとんどです。

むしろ試験直前期には、見たことがない問題で習熟度を試すことを推奨したいです。見たことがない問題を解いた後、過去に解いた類題とセットで復習すると理想的です。

本試験でこのような問題が出てきたときに、きちんと対応ができるかどうか。正しい理解ができている人は、正解できるはずですが、「問題集の問題を覚えているだけ」の場合、対応できない可能性があります。

自らの理解度をチェックするためにも、見たことのない新しい問題を解くことは有効でしょう。

自分の理解度を把握するのは実は簡単ではありません。試験当日に「実はわかっていなかった…」と気づくようなことが無いように、真新しい問題も解くようにしましょう。

また、長い期間、勉強をしてきた人は、この時期、疲れも出てきて、集中力を欠いているケースも見かけます。勉強がマンネリ化していると感じている人にとっても、テスト形式は有効でしょう。

不思議なもので、「テスト」という形を取るだけで、集中して取り組める人も多いようです。

このように「本試験を通しで解く」という勉強法は、皆さんの抱える様々な悩みに効果のある万能薬だと思っています。ぜひ、試してみてください。